続・キミたんザウバーものがたり

前回に続き、エニグマさんがキミたんのザウバー時代のレースエンジニア、Jacky Eeckelaertさんにインタビューしているシリーズです。今回はトレーニングを二倍がんばるキミたん、テストでもやる気が大バクハツ、メルボルン寝太郎、しびれるきめぜりふ(?)と盛りだくさんウハウハで、読んでてよだれが出そうでした!まじ本当エニグマさんありがとうございます。1月→5月ときたので次は9月あたりに期待しています…枕からオファーがきたときのこととかおねがいしますジャッキーさん!

Kimi’s first race

前回(前回)はキミのデビューチーム、ザウバーで彼のレースエンジニアをしていたJacky Eeckelaertから素晴らしい話を聞くことができた。 今回は、初めてのテストからデビューレースまで、どのように事態が進展していったのかを聞くため、再びジャッキーを訪ねた。

「キミとの初テストを終えて、私達は次のテストを行った。その時はレッドブルがザウバーをスポンサードしており、ディートリッヒ・マテシッツが、エンリケ・ベルノルディとサインするようチームに圧力をかけてきていた。ベルノルディは非常に速いドライバーだったが、私はキミの中に、速さだけでなく強い決意があるのを感じていた。ベルノルディよりはキミが加入する方がより良いだろうと考えていた。
そのため、私達はムジェロで、キミとベルノルディのテストを行った。ラップタイムは似たようなものだったが、計測ラップを10周するスティントを指示したときに、既に違いを感じ取ることができた。エンリケは数周後に一貫性を欠き始めたが、キミはあたかも時計のように走った。それを見て、どちらのドライバーを選ぶかは明確になった」

ザウバーはキミを選択した。そこで次の計画は、彼に多くのマイレージを経験させることだった。

「F1で勝つためには20分とか30分ドライブすればいいというわけではない。カートやフォーミュラ・ルノーとは違って、F1レースは少なくとも1.5時間以上続く。あの時は給油を行っていたため、彼にはピットストップまでに必要な20周を走ることへの準備をさせるというアイディアだった。この20周に取り組み続けること、冬の間に私達が集中しなければならなかったのはそれだった。
そこでキミは冬の間に、F1ドライバーのフィットネスレベルに到達するため、集中的なトレーニングプログラムに着手した。その期間中に、キミは再び決意の強さを見せてくれた。チームは彼にプログラムを与えたが、評価してみると、私達が彼に要求した量の少なくとも二倍の量をこなしたのは明らかだった」

1月のテスト中、キミは再びチームを感銘させることになったとジャッキーは説明する。

「テスト期間は午後5時までとなっているが、それより45分も早く予定が完了してしまったこともあった。(プログラムが終わると)大多数のドライバー達は他の活動をしにモーターホームへ戻ったが、キミは違っていた。彼は戻ってきて”もう一回ロングランをやれる?”と聞いてきたんだ。フィジカルの面で、キミは非常に短期間の間に強さを増していた。たくさんのことを学び、彼が興味をもっていたのは勝つことだけだった」

キミ・ライコネンのF1デビューは2001年のオーストラリアGPだった。初めての予選で彼は、チームメイトのニック・ハイドフェルドからたった3つ後ろの、13番グリッドを獲得した。いいスタートだった。
レース前、そろそろピットレーンオープンという頃、クルマをグリッドに送り出すまであと15分。その5分前に、チームはガレージに現れないキミを探していた。

「ピットレーンのサインがグリーンになるまであと5分というところになっても、キミはガレージに現れない。どこにもいなかったんだ! そこで私達はモーターホームに探しに行って、眠っている彼を見つけた。彼のリラックスする方法だったんだ、F1のデビューレースであっても! “なに? もう始まるの? いま行く、いま行くよ[What? Is it now already? I’m coming, I’m coming]”と言ったのを覚えている。彼は全てを完璧にコントロールしていたんだ。
レース前に、私は彼にアドバイスをした。最後のラップまでプッシュし続けろと。ポイント圏外であっても、プッシュし続けるのはとても大切なことだと。どのパーツに問題があるのか、再設計が必要なのかを知るためにレース後にクルマを分解してチェックを行うからだ。次のレースに向けて全てをスムーズにするために、クルマをコンスタントなプレッシャーの下に保たなければならない。あと数周というところで壊れてしまうパーツは、再設計される必要があるからだ」

キミは初レースをハインツ-ハラルド・フレンツェンに続く7位でフィニッシュした。しかし黄旗中のオーバーテイクによってオリビエ・パニスとヨス・フェルスタッペンに25秒加算ペナルティが下された。パニスはキミより前の4位でフィニッシュしていたため、キミは6位に繰り上がった。キミは、グランプリデビュー戦でポイントを獲得した数少ないドライバーのひとりになったのだ。

「ペナルティが適用されて順位が繰り上がったのは、彼がきちんと最後までプッシュし続けて、差を縮めていたからだ。レースが終わった後、私は彼に”デビュー戦でポイントを獲得したね、どんな気分だ?”と聞いたんだ。彼は無表情で私の方をみてこう返答したよ。”(優勝まで)あと5つだ[another 5 to beat]”とね」

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