THE QUIET MAN

やっと管理画面の表示に成功しました。今年もよろしくお願いします。
新年ひとつめの記事がまさかのフォーミュラEなんですけど。

フォーミュラE興味ある人はチェックしてると思うんですがCurrent Eというサイトでピケ様のロングインタビューがありまして、なんかとっても訳しにくい話だったんですけど、ぴけF的には知りたかったこと満載だったので日本語にしたいなーぴけFさんやフォーミュラE見てる人に読んでもらえたらいいなーと思って書きました。時間かかった割になんか日本語でおkな仕上がりなんだけどそこは雰囲気でヨロシク!

2015シーズンはこのブログどう書いていこうか、考え中ですー。

THE QUIET MAN

フォーミュラEは、元F1ドライバー達とともに、プロスト、セナ、ブラバム…モータースポーツ界の良く知られた名前をグリッドに連れてきてくれた。それは福音と贖罪の物語、ゴスペルのようだった。しかし、有名なドライバー達の多くには多くの歓迎の声が上がったものの、おそらく最も有名な名前のひとりである彼は、(まさに相応しくクリスマスの直前の)最初の表彰台までほとんど見落とされていた。ネルソン・ピケジュニアである。

12月上旬にインタビューした時、彼は気を悪くしているようには見えなかった。「楽しいことがたくさんあるからね」と話していた。そう話すのは一苦労だっただろうけれども。ブエノスアイレスで初表彰台を祝うまで、彼はほとんど目立っていなくて、大きく騒ぎになることもなく淡々と仕事を続けていた。パドックの中でさえも。

ピケJr.は1980年代にブラバムやウィリアムズで活躍した、3度のワールドチャンピオンの息子である。グリッド上の他のドライバー達と同じように、オープンホイールレーシングの血が流れている。ピケJr.はレーストラックで力を証明してきた。GP2ではルイス・ハミルトンに続く選手権2位となり、A1GPシリーズの2戦で優勝したり、F1チームでフェルナンド・アロンソのチームメイトとなっている。
「クラッシュゲート」と呼ばれる2008年の悪名高い事件で、オープンコクピットカーでの有望と思われたキャリアは突然止まってしまった。ビッグネームによるあらゆるマーケティングチャンスを熱心に求めているフォーミュラEにおいては、この新シリーズに対するピケJr.の低姿勢な態度というのは必要ないように思える。F1からの失脚が完全に消えたわけではない。フォーミュラE上層部と、クラッシュゲートのピケJr.のボス、元ルノー代表のブリアトーレには長期の関係がある。その政治的なつながりは、ピケJrのフォーミュラEキャリアは始まってもいないのに終わったことを意味していた。

ピケJrはアメリカのノースカロライナに住んでいる。13万8000人のキャパシティをもつNASCARのメッカ、シャーロットスピードウェイの近くだ。「シャーロットはシーズンのビッグレースだから、NASCARチームは大体このあたりにあるんだ。イギリスでシルバーストンに近くなるように、オックスフォードかバンバリーに住んでいるみたいな感じ。アメリカでは多くのドライバーがシャーロットに引っ越すんだ」ピケJrはF1を去った後、NASCARに活路を求めた。「素晴らしいスポーツなんだ」メインスポンサーを失って2014年のドライブはなくなったが、レッドブルGRC(ラリークロス)シリーズに参加し、ケン・ブロックやスコット・スピードらに続いて選手権4位となった。フォーミュラEという形でオープンホイールレーシングへの復帰がみえてきたとき、ピケJrはすぐに興味を持った。「すぐに2チームからオファーを受けた。チームに会いに行ったけど、主に政治的な理由で契約は実現しなかった」と、ブラジルとオランダのハーフの彼はアメリカンアクセントで語った。2014年の夏が過ぎていき、ドライバーが次々と発表され、フォーミュラEはピケJrの前を素通りしていくかのようだった。「その時はちょっと諦めてたよ」

それから、チャイナ・レーシングに技術的ノウハウと人的リソースを提供している名門のトップ、エイドリアン・カンポスから電話があった。「エイドリアンはテストしたいかと聞いてくれて、僕はもちろんと答えたんだ。すぐにヨーロッパへ向かってテストをして、事はうまく進んだ。クアルコムもフォーミュラEに大きな興味を持っていたんだ。クアルコムはNASCARで僕をスポンサードしてくれていて、今はフォーミュラEでサポートしてくれている」

チャイナ・レーシングはプレシーズンテストで波があった。トゥルーリやドラゴンのように走り出しては止まるというわけではなかったが、eダムスルノーやアウディABT, ベントゥーリのように一貫性のあるパフォーマンスでもなかった。「ドニントンで全然ペースがなかったからちょっと心配になった。僕は考えてた – クルマのせい?それとも僕のせいか?って。他のみんなはたくさんのテスト走行をしていたけど、僕は最後に参加しただけ。チャイナレーシングは他の多くのチームよりも小さな組織だけど、とても一生懸命に働いている良いチームなんだ」

それらの心配は北京での初レースまで続いた。レース形式やクルマの脆さに苦戦するチームも出る中、チャイナレーシングのホームレースでもある開幕戦は、多くのコメンテーターが予想していたよりもスムーズに進んで行った。「中国に着いてみたら、大丈夫だったんだ。ペースも良かったし、クルマもよかった。新しいトラックだったから、全員ゼロからのスタートになったんだ」ピケJrは予選10番グリッドを獲得し、8位でフィニッシュした。チームメイトのホーピン・タンが15番手から16位フィニッシュしたのに対し、ひときわ印象的なパフォーマンスだった。

「マレーシアはもっと良かった。コースもよりチャレンジングで気に入った。プラクティスでも、レースでも、どんどん良くなっていった」この彼の発言は、6番グリッドからスタートして、ヤルノ・トゥルーリにコンクリート壁に押し付けられるまではトップ5フィニッシュが見えていたことからも裏付けられている。「トゥルーリがどこであの動きをしたのかは知らないけど、わざとではないと信じている。その時の彼の考えはよく分からない。ピットレーン速度違反で、彼は次のラップにドライブスルーに入るところだったのに、優勝争いをしてるみたいにディフェンスしていたんだ。不幸なことではあったけど、僕にとっては単に不運だっただけだ。良いポジションでのフィニッシュが見えていたから、フラストレーションは感じた」

チャイナ・レーシングは、年内最後のレースであるウルグアイでの確かな前進を期待していたが、なんというステップだろう。ピケは予選ですさまじいドライブを見せ、驚きの速さでデビューした2014年のF1ドライバー、ジャン-エリック・ベルニュに続く2番グリッドを獲得した。タフなレースになりそうだ、というのがわかった1コーナーまで、ピケJr.は強力なスタートでレースをリードした。最後まで耐え抜くことは並のことではなかったが、2位を守り切ってフォーミュラEの初表彰台を獲得した。彼にとってもチームにとっても、思い切り喜びを味わうことのできる瞬間だった。

2015年最初のレースも表彰台フィニッシュした。数えきれないほどの接触にセーフティーカーが出て、精度の高いドライビングが求められるというよりはマリオ・カートのような混乱したレースになり、優勝したドライバー(ダ・コスタ)もフィニッシュの瞬間まで確信がもてないようだった。シーズン4レースを終え、ピケは3位ブエミから6ポイント、4位プロストから5ポイント差の選手権5位につけている。タイトルへの挑戦は突如、現実的な可能性になってきた。

スパーク・ルノーに慣れることは多くのドライバー達にとって容易ではないということが明らかになってきている。「エンジンやタイヤの変化が聞こえないんだ。クルマとドライバーとのつながりの一つに、感覚がある。底を擦っている、オーバーステア、アンダーステアだ、とか。だけど、音もその一つなんだ。ギアボックスの扱い方や、エンジンの回転をどのくらい上げるかということの決め手になる。集中力が高まるドライバーもいるだろう。エンジン音や振動ががどれほど大きいかということは問題じゃなくて、僕達の体はそれらが好きなんだ。集中するのを助けてくれる。瞑想のように」

観客にフォーミュラEカーからの音は聞こえるが、自分自身が生み出すノイズに常にさらされる場所のコクピットの中は全く異なる環境だ。ピケJr.も他のドライバー達と同じことを言うが、従来のレースカーのようなノイズがない状態には素早く慣れることが出来たという。「音のことは忘れてしまう。集中力が高まって、あるゾーンに入るとね。ブレーキングを遅らせよう、このコーナー、あそこのコーナー、そういう細々としたことを、いい1周を走りきるために。(様々なことが大きく異なる)フォーミュラEカーも、ただ、レースカーになる」

トルクのかかるスパーク・ルノーで、スリッピーなストリートサーキットにていいタイムを出すためには、ドライバーによる知的なアプローチと、チームによる確かなセットアップストラテジーが必要である。「丁寧に、クリーンに、積極的にやろうとトライする。アグレッシブになりすぎてはいけないし、ラインを外れてもだめだ。100%スムースにやらなければならない。冷静でいなければならない。レースカーに乗っている時は、速いコーナリングのために『スプリングか?アンチロールバーを変えた方がいいか?』と常に考えているんだ。フォーミュラEでは考えることは少し違っている。メカニカルセットアップに関することは少し減って、セパンで走ってる時というよりはモナコに近いかな。フォーミュラEのコースはみんなモナコみたいで、1周が短くバンピーで、コーナーがタイトだ。ギアレシオは変わらないし、ウイングは効率化のために出来る限りオフしている。フォーミュラEではパフォーマンスの70%がバッテリー効率のため、残りの30%はメカニカルな部分のためなんだ」

バッテリーマネジメントはフォーミュラEにおけるひとつのキーであり、これにはパワーマップを設定するエンジニア、そしてドライバーからのインプットが出来る限り多く必要だ。「バッテリーの面では、中国はかなりきつかった。でもマレーシアはそうでもなかった。ウルグアイとブエノスアイレスは何度もセーフティカーが入ったからバッテリーの節約になった。フォーミュラEカーはかなりセンシティブ。ブレーキの温度の高低で、大きな違いが出るんだ。ブレーキバイアスや回生で色々試せるけど、同時に変動を生む。コンスタントな状態を保つためにレベルを上げ下げして、僕達はたくさんの仕事をやってきた。苦労しなくてもいいレースセッティングのやり方を見つけたんだ。いったんスイートスポットにはまれば、トライも出来るし、続けていくことも出来る」

フォーミュラEの局面のひとつ、トラックは、ドライバー達にはチャレンジングだ。カレンダーは新しいストリートサーキットで埋まっており、コースに慣れるにはレース当日しかない。データ不足と、初年度の限られた予算とのコンビネーションが、正確なシミュレーションを困難にしている。1月はじめのブエノスアイレスで素晴らしい夕日を浴びながら、ニック・ハイドフェルドとステファン・サラザンはコーナーに立ち止まり、歩いてきたセクションを振り返っていた。「シミュレーターでは、ここはストレートだった」とハイドフェルドは眉を寄せた。サラザンはすっきりとまとめる。「僕の時は違ってた」

「フォーミュラEではトラックで走る時間が多くないから、シミュレーターを使う時間は重要になってくる。ドライバー達はみんな好きだと思う。ただドライブ、ドライブ、ドライブ。集中できるから。僕達はビッグチームではないから、ぜいたくな機能は何もない、小さなシミュレーターを使っている。F1チームはコースをレーザーマップで作り、自分達のクルマも作って、パーフェクトにシミュレーションできる。僕達は、コースのCADマップを使ってるんだ。高低差やバンプは分からない。クルマのデータも入れられないから、厳密なエンジニアリングデータも取れなくて、やれることはかなり限られてる。もっと多くの時間をかけているチームだって、どうやって全てを再現する?シミュレーションと実際のラップタイムは5秒くらい差があるんだ」

ピケJr.は、(シミュレーションに多額を投資する)利点もあるとした上で、チームの予算が限られているため、この短期間においては(シミュレータよりも)よりよい使い道があるかもしれないと考えている。

「シミュレーターにお金をかけるとして、100%つぎ込んでも意味がないかもしれない。予算全体の10%しか払えないとしたら、エンジニアを追加で雇った方がいいかもしれない。効果があるところにお金を使った方がいいんだ。ジムを建てるとして、スペースがない小さいものを建てる意味はないだろ?ドライバーをテストできて弱点を見つけることが出来る、最新のトレーニング設備がある方がいい。手に入れられないのなら誰かのを借りるんだ」

チャイナレーシングのボス、スティーブン・ルーは、二年目のシーズンにてコンストラクターになることを真剣に検討しており、パートナー候補達との交渉も順調に進んでいると明らかにした。しかし、そのようなパートナーシップが予算にどのような影響を与えるのかはおろか、正確なテクニカルレギュレーションでさえも依然として不透明なままである。ピケJr.は深刻に憂慮してはいない。「僕達のチームには、話をもってきているマニュファクチャラーがたくさんいる。もしその中のひとつとサインするとなると、バッテリーやパワートレインにどのくらいかかるのか、サポートはどれくらい受けられるのかを考慮することになる。一年を通じて、ピースが嵌まって行くことになると思う」

今は消滅したA1 GPとフォーミュラEとを比べて、このシリーズは一年持たないだろうと決めつける懐疑的な人もいる。 両方の経験をもつピケJr.は、二つの大きく明確な違いは、強力なマニュファクチャラーが興味を示している点だという。「僕はA1 GPの最初のウィナーだ。開始当初は素晴らしい環境だったよ。フォーミュラEもA1GPも同じくらいの資金があったと思う。でもA1GPには計画がなかった。資金をただ使っていくだけで、それから物事をころころ変え始めた。フォーミュラEは違う。この先に大きな計画があり、関係するマニュファクチャラーもたくさん増えていき、素早く成長していくだろう」

ピケJr.は今シーズンのレースひとつひとつにただ集中していくだけだと語っている。「今シーズンの全レースに出られるか、100%の確信はない。チームのスポンサーシップに左右されるから。このレースシートに多額の資金を払いたいドライバーも何人かいる。僕に必要なのはいい結果を出していくことだけだ。それについては、僕達はみんな楽観的に考えている。GP2であっても、小さなチームはトップチームに挑むチャンスさえない。僕はそのことにかなり勇気づけられている。クルマの種類は違うけど、僕はオープンホイールのレースが恋しかったんだ。自分のルーツに戻ってこられて、素晴らしい気持ちがしている」

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