HEROES: Sebastian Vettel [Red Bulletin May 2010] vol.2

RB(Easy): なぜクルマに名前をつけるの?
SV: よく分からないけど、習慣になったんだ。何年か前にキャリアが始まった。今年はLuscious Liz(官能的なリズ)、去年はKateとKate’s dirty sister、その前、トロ・ロッソではJuliaだった。
RB: これは誰かの、えーと、知ってる人の名前をとってつけたの?
彼は、この質問の意図を分かっているかのように笑った。
SV: いいや。ズボン履いてない時ってことデショ?名前にはちょっとした説明があるんだよね。まず、いい名前じゃないとダメ。美人なレディをイメージできるような名前じゃないとダメだ。だけど同時に、彼女は、わかるでしょ、ワイルドでありうる。マシンは名前みたいにならないようにしなきゃいけないけど…ああ、ここ慎重にならなきゃだめだね……そういう風にならない名前は、たとえば、Daisyとか?だけどこれを読んでいるデイジーがいたら、いい気持ちはしないよね! こんな感じで、深い意味はないんだけど、これはクルマに対する仕事へ感謝する僕の方法で、メカニックのみんながクルマに思いをもつ方法なんだ。

RB(Hard): ユーモアのセンスを失っていってる?
SV: どうして?
RB: 最近は、より激しい状況にあるから。あなたは短期間で、チャンピオンシップの可能性を秘めた一番若いドライバーになった。プレッシャーもあるでしょ?
SV: うん。だけどこういう風に考えてるんだ。今年はもっと期待がある。ポジティヴなね。去年、強力なポジションにいたから、同じようなことをみんな期待する。僕にとってそれは賛辞だ。とりわけ、自分がなぜここにいるのかをいつも分かっていなければならない。F1に辿り着いたことを、とてつもなく嬉しくて、すごく誇りに思ってる。12月にゴーカートのレースに行って、若い男の子、時には女の子に会った。おっかしいんだけど、彼らは僕のことを他の普段レースしてる相手のドライバーみたいに見る。彼らは「F1のドライバー」に会ってるんだけど、僕にとっては、時には彼らと何歳も変わらなかったりして、少し変な感じだ。僕のすることをたくさんの人々が気にする。その人達のスポーツの頂点なんだ。この事実は忘れてはいけないと思う。サーキットでいつも通りのことをするなら、それはルーティンになって、仕事みたいになる。レーシングを始める瞬間、予選ラップに出て行く瞬間、たとえば「すごい、これがF1だ」なんて考えてない。その瞬間に100%の集中をしているから。だけど、自分がどこからスタートして、何をやっているのか、決して忘れてはいけないんだ。自分がやっていることの喜びを常に感じて、エンジョイすべきだ。そして、楽しみを決して失ってはいけない。僕は、これが自分が誰であるかってことと同じだと思ってる。自分がどこからスタートしたのか、忘れてはいけない。最初の質問に戻ると、僕にユーモアのセンスがあるなら、僕はそれをキープしないといけないね。だめな理由はない。

RB(Hard): 去年のタイトルを失った理由は?
この質問は、いままでの笑顔から不機嫌な表情を促した。
SV: 去年のシーズンを振り返ってみると、僕達はすごく、とても、いいシーズンを過ごした。今年とは全然違うスタートで。レースに勝って、ワールドチャンピオンになるのが僕の目標だった。だけどみんなも知っているように、F1ではクルマの出来と全体的な環境に依存するんだ。去年、僕達はすごく強力なポジションにいた。もし僕達が去年のタイトルを失った理由があるとすれば、大部分は、シーズンの序盤で、レギュレーションの解釈がチーム間で異なっていたという事実だ[ダブルディフューザーのルールが、最終的なタイトル獲得者Brawn GPに序盤のアドバンテージを与えた]。これが一番大きな理由のひとつだろう。サーキットで僕達は、常に理に適った仕事をした。ミスも犯した、失敗もあった。だけど、これが人間だ。いくつかは僕達のせいだ。だけど僕は、僕達が台無しにしたとは言わない。僕達はミスを犯したけど、今年はもう既にそれらの過ちから学んでいるから、それも重要だったんだ。思えば5回のリタイアは、最高ってわけじゃなかったね…

RB(Easy): Gerhard Noackとは誰?
SV: 若い頃、クルマを買ってゴーカートに行きたかった人物。これで彼の感情を傷つけないと思うけど—– 彼は、自分はあまり速くないと理解した。そして彼は少年ミハエル(後にミハエル・シューマッハーになる人物)に出会い、ミハエルがとてもよくやっているのに、レーシングをする十分なお金を持っていないのを見た。それで彼は、ミハエルをサポートすることに決めたんだ。ミハエルがすごく小さい時から15, 16歳頃まで、ゲルハルトは彼をすごく助けた。彼と旅して、メカニックになって、スポンサーを調達して、いつも彼と一緒だったから、時には「父」の役割までやった。ミハエルがシングルシーターに進んだ時も彼はそばにいて、Kerpenでカートのトラックを持っていた。まだ(トラックは)あるんだよ。運命的に、僕達がレースをはじめたとき、チャンピオンシップのひとつはKerpenで開催されたんだ。ゲルハルトはすごく早い段階で僕達を助けてくれることを決め、僕達は彼のチームで走った。そのとき僕達は5000ユーロでレースしてたから、すごく助かったよ!彼は僕達をシングルシーターまでずっと助けてくれたんだ。レッドブルが来てくれるまでね。だけどゲルハルトは本当に早くから僕達をサポートしてくれた。レーシングをやっているほとんどの人達はすごくお金に困っているんだ。でも彼はいつも資金の面倒をみてくれて、僕達をすごく助けてくれた。僕が7歳か8歳頃、レースに参加するだけで精一杯だったから、チームキットとかを買うお金がなかったのを覚えてる。でも、僕がレースに勝った時に彼にもらった一番最初のプレゼントのひとつは、Tony Kartチームキットのシャツだったんだ。すっごくありがたかった。「すっごいクール!!」って。彼は全然厳しくなかった。「OK, これも、別のも」みたいな感じで。彼は僕の人生で本当に大きな存在だ。最初、彼は僕をちょっとしたプレゼントでハッピーにしてくれたけど、一番重要だったのは、僕達が資金を見つけるのを手伝ってくれたことだ。そしてとうとうレッドブルを探してくれた。振り返ってみれば、とても大切だった。

RB(Easy): 髪を伸ばしてるの?
SV: 僕の美容師が死んだから。ウソだけど!自分でも分からないけど…いつもはシーズンが始まる前に髪を切るんだけど、今回は冬が終わって、そのままにしておこうと思ったんだ。少し整えたけど、それだけ。

RB(Hard): 負けるのが嫌いでしょ?
SV: 簡単な質問だよ。YES! もっちろん。次!

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